アブラカタブラ

息も絶え絶えポックリ逝ったはずのダマランチが潜入した広場では、五千人ほどの脂ぎった中年男性が行進していた。

「脂ぎれ! 脂ぎれ!」

先頭の男はそう叫び、おっさんたちは、いつも以上に脂ぎって見せた。
看板には「第八回脂ぎり選手権 脂たちの競演」と書かれている。
ダマランチは妙案だとばかりにその行進に紛れ込んだ。

くくく、脂ぎることにかけては、このおれの右に出るものはいない!

そこに妖精アニャニャッチャが、ひらりと現れ、ダマランチの脂をこそぎとってしまった。

「アハハハ、アンタの脂なんか……」

しかし、残念ながら、ダマランチの脂は、妖精にとっては毒以外の何物でもなかった。

アニャニャッチャは羽虫のごとく、ペタリと落ち、そのまま脂たちの行進の中で見えなくなってしまった。

「まず、神はこうおっしゃった。『脂ぎれ!』すると脂がこの世に生まれたのです!!」
歓声が湧き起こる。

司会の男は、黒いスーツに紅い蝶ネクタイで、眼鏡をかけている。
身体は細く、しかしながら、確実に額には脂が浮き上がっていた。

「さあ、みなさんには脂のプールをご用意しています。その肥満体に拍車をかけ、さらなる脂の高みを目指しましょう」

ぞろぞろとアブラーズを引きつれ、司会のスーツアブラマンが先頭を切って歩く。

その先にはなんと! 
脂のプールを呑みつくして、視線があっちの世界に行ってしまっているカール伯爵が待っていたのだ。

「待っていたぞ、モゴラーニャ」

しかし、モゴラーニャはいなかったので、誰も返事をしなかった。

沈黙の代わりに脂を称える声が、それは冬将軍のように、あるいは日本海あたりに打ちつける荒波のように、カール伯爵に世の厳しさを教え諭したのである!
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by reddragon_samael | 2007-01-24 02:20 | モゴラーニャの冒険シリーズ